だいたい気になっていた箇所について確認できるインタビューが出揃ってきたので、自分なりに腑に落ちたコメントをまとめてみます。

あのケースについて、僕が引っかかったのは一つだけ。「あのケースでそれぞれのプレーヤーにどんなサインが出されていたのか」ってこと。首脳陣の采配や各選手の判断がどうだったか、どうあるべきだったのかには興味をひかれない。どういうサインがでていて、それに従って(もしくは反して)選手がどう動いた故にあの状況が生まれたのか、事実が知りたい。問題の場面と試合後のいくつかの解説やインタビューを確認しただけでは納得できる仮定がえられなかったことがどうにも気持ち悪かったのです。

■本当にグリーンライトでのダブルスチールで走者は動いたのだろうか??
特に、試合終了後の監督インタビューでの"8回の走塁はダブルスチールを行ってもいいというサインでした"という発言。いわゆるグリーンライトでの重盗と読み取れるのだけど、本当にそのサインであのシーンを迎えれば、かなり高い確率で同じ結果か起こるだろうと感じました。理由は後ほど触れます。これは采配が間違っているというより、そもそも采配として選択するカードに入るのか?というぐらいの疑問。

この疑問に際して、監督やコーチ、選手のコメントも、numberのこの記事にあるように、グリーンライトだったのかどうか、各人の認識が割れていることも気になりました。

「重盗にいってもいいというサインがあって、少し井端のスタートが遅れた」

 こう振り返ったのは山本浩二監督だった。

 果たしてここで何が起こったのか?

 首脳陣と選手の証言を改めて整理してみると、こんな“事実”が浮かび上がってくる。

「グリーンライト(盗塁をしても良い許可)ではなく盗塁(必ずしろ)のサインでした」

 こう話すのは一塁コーチャーの緒方耕一外野守備走塁コーチだった。このサインを井端はこう説明する。

「この球、じゃなくて行けたら行け、だった」

足で勝って、足で負けた侍ジャパン。あの8回裏の重盗シーン、全真相。


では、実際あのシーンの動画をみてみると、

  • 二塁走者はスタートをきった動作をしたが、投手からボールが離れる前に、4歩ほど走ったところでストップ

  • 一塁走者は二塁走者のスタートをきった動作をみてからスタート

  • 一塁走者はスタートをきったあと、目をきって加速に集中し、一度投球の結果を確認したのち、再び目をきって二塁まで加速

  • そして、二塁到達直前で二塁走者がストップしていることに気づき挟殺


という動きが確認できます。必ず盗塁しろのサインならば、一塁走者は投手をみてスタートをきっていたはずだし、二塁ランナーはもちろん途中でストップすることはあり得ない。つまり、一二塁のそれぞれの走者は、グリーンライトでのダブルスチールというサインと認識して動いてます(二塁走者はインタビューでコメントしてる)。そして、これはグリーンライトでのダブルスチールというサインが、事前に決められていたということも意味しますね。

このサインを出す側/出される側の意見の混乱は、今後の改善ポイントの一つだと思いますが、それはそれとして話を進めます。

■仮に二塁走者のストップに気付けたとして、一塁走者は無事に帰塁できたのか
前述のように走者はグリーンライトでの重盗というサインをうけたという認識で動いてますが、僕はどうしてもそのサインが存在することが納得できませんでした。なぜならば、今回のケースだと一塁走者の判断ではどうにもならない場面がでてくると考えたから。

今回のケースでは、動画で確認したように一塁走者は二塁走者のスタートを確認したうえで自身のスタートをきってます。その後、二塁走者がストップしたのを確認できずに、二塁付近まで走ってしまったために挟殺された、と見えてしまう。しかし、仮に二塁走者がストップしたのを確認できたとして、はたして一塁走者は無事に帰塁できたのでしょうか。

一塁走者は二塁走者のスタートをもとにスタートをきるのと同様に、ストップについても二塁走者のストップを確認して自身もストップすることになります。つまり、一塁走者がストップした時、二塁走者がストップした時よりも投手が投げたボールは捕手に近づいているため、無事に帰塁するために必要な時間は短くなるわけです。更に、捕手からの距離の遠い二塁走者の飛び出す歩数分、一塁走者も飛び出してしまう。

どんなに適切に判断して動けたとしても、二塁走者分の飛び出した歩数&短い帰塁時間を一塁走者は背負う。そのため、このサインは無しなんじゃないのというのが僕の考えた懸念です。特に、この場面は強肩モリーナ。動画で確認すると若干ファーストの守備位置は後ろよりで、走った後の反応は鈍い気がするけど、それでも、無事に帰塁できた可能性は低いんじゃないのと思う。

「井端が2歩半くらいだったと思うけれど、あそこで内川がそれを見たとしても、止まるまで2歩は行ったと思う。そのタイミングで止まったとしても挟まれてしまうんじゃないですか」

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■グリーンライトでのダブルスチールを納得させてくれた二つの注意事項
そんな懸念を解消してくれたのが、このインタビュー。

「強化試合のときに重盗の注意事項を確認した。一塁走者は、スタートが遅れたら付いていかない。二塁走者はスタートの偽装をしない。それが徹底できなかった」

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なるほど、この注意事項があるなら、このサインは采配のカードに組み入れることができるなと感じました。一つ目の注意事項で、どうしても遅れてしまう一塁走者が強引に走ることでのリスクを回避してます。そして、二つ目の注意事項。この「スタートの偽装をしない」があることで、一塁走者はスタートに集中できるし、今回のような走った先の二塁走者が帰塁していた、という事態も発生しない。これなら、あの場面でのグリーンライトでのダブルスチールというサインも腑に落ちます。今回の事象はこの注意事項の不徹底にありそうです。

これまでの情報を踏まえて、僕のなかで未だ不明な点は

  • 一塁コーチャーとそれ以外の走者や監督・コーチとのサインの認識が違うのは何故?

  • 二塁走者はスタートの偽装をしたのは何故?


この二つ。きっと今後新たな情報が出てくると思います。ただ、既に僕の引っかかりはほぼ解消されたのでここまで。